キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは?
厚労省の雇用関係助成金は、一般的な補助金制度とは異なり、取り組みを実施した場合には事後の申請により受給することが出来るのが大きな特徴です。申請手順は非常に複雑ですが、採用コストの軽減にお役立てください。
「キャリアアップ助成金」は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して金銭面での支援を行う制度です。今回紹介する「正社員化コース」は非正規労働者の正社員化に対し助成を行うコースとなります。
雇用保険の適用を受ける事業所の事業主
※民間の事業者のほか、民法上の公益法人、特定非営利活動促進法上の特定非営利活動法人(いわゆるNPO法人)、医療法上の医療法人、社会福祉法上の社会福祉法人なども含む
事業規模に関わらず助成の対象となりますが、大企業については助成額が一部異なります。
- 雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いている事業主
- 雇用保険適用事業所ごとに対象労働者に対してキャリアアップ計画を作成し管轄労働局庁の受給資格の認定をうけた事業主であること
- 対象労働者に対する労働条件、賃金の支払い状況等を明らかする書類を整備していること
- キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること
【中小事業主の範囲】
・製造業その他: 資本金3億円以下の会社 又は 従業員数300人以下
・卸売業: 資本金1億円以下の会社 又は 従業員数100人以下
・サービス業: 資本金5千万円以下の会社 又は 従業員数100人以下
・小売業: 資本金5千万円以下の会社 又は 従業員数50人以下
対象となる労働者
・同一の組織単位において6ヶ月以上の期間継続して直接雇用されていること。
・同一の組織単位において6ヶ月以上の期間継続して派遣就業していること。
※新型コロナの影響による離職者の派遣就業の場合には下記の要件緩和が適用
主な支給要件
- 派遣労働者を正規雇用労働者または多様な正社員として直接雇用する制度を労働協約または就業規則その他これに準じるものに規定していること
- 正規雇用等へ転換等した際、転換等前の6か月と転換等後の6か月の賃金を比較して3%以上増額していること
- 転換日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、対象となる事業所において事業主の都合により雇用保険被保険者を解雇等していないこと
※助成要件は非常に多岐にわたるため、このほか詳細について興味がある方は直接生島社労士事務所までお問い合わせください。
助成額及び上限
1年度1事業所当たりの支給申請上限人数は①~③合わせて20名まで
①有期 → 正規:1人当たり 57万円<72万円>(42万7,500円<54万円>)
②有期 → 無期:1人当たり28万5,000円<36万円>(21万3,750円<27万円>)
③無期 → 正規:1人当たり28万5,000円<36万円>(21万3,750円<27万円>)
<>は「生産性要件」を満たす場合の額、()内は大企業の額となります。
生産性要件について 厚労省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137393.html
助成額の加算について
下記の条件を満たす場合にはそれぞれ助成額の加算が行われます。
(1) 派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用した場合に助成額を加算
※上記①③の場合:1人当たり28万5,000円<36万円>(大企業も同額)
(2) 母子家庭の母等または父子家庭の父を転換等した場合に助成額を加算
(転換等した日において母子家庭の母等または父子家庭の父である必要があります)
※上記 ①の場合:1人当たり95,000円<12万円>、②③の場合:47,500円<60,000円>(大企業も同額)
(3) 勤務地限定・職務限定・短時間正社員制度を新たに規定し、有期雇用労働者等を当該雇用区分に転換または直接雇用した場合に助成額を加算
※上記①③の場合:1事業所当たり95,000円<12万円>(71,250円<90,000円>) <1事業所当たり1回のみ>
申請までの流れ
(1)就業規則等の改定
正社員等への転換規定がない場合は事前に就業規則等を改定し、労働基準監督署に提出する必要があります。
(2)キャリアアップ管理者の選定
キャリアアップ計画の実施に掛かる責任者を選定します。資格要件などはありませんが計画の実行に必要な知識や経験を有している必要があります。
(3)キャリアアップ計画を作成・提出
助成対象となる労働者に講じる措置(正社員化など)を記載した計画書を作成し、労働局・ハローワークに提出します。※労働局・ハローワークが計画の作成援助等も行います。
(4)取組の実施
キャリアアップ計画に基づき、取り組みを実施します。
(5)6か月雇用後支給申請
転換後6か月分の給与を支払った翌日から2か月以内に助成金の支給申請を行います。
申請様式は下記でダウンロード可能です
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html
(6)支給決定の通知書が届く
通知書が交付され、助成金が振り込まれます。
- キャリアアップ計画の作成
- 労働局・ハローワークへの提出・許可をもらう
- 就業規則等の変更および周知
- 転換後半年間の賃金の支払い(3%要件)
キャリアアップ助成金の支給までの大まかな流れは、キャリアアップ計画の作成を行い担当労働局もしくはハローワークへ計画を提出します。
その後、正社員化コースかそれ以外でフローが多少異なりますが、正社員化コースの場合は就業規則等の改定を転換規定がない場合に行います。その後、就業規則等に基づき正規雇用へと転換し、半年の賃金を支払います。(※正社員化後に3%以上の賃金増額がある必要があります。)
半年後に支給申請を労働局に行い審査され支給が行われます。
処遇等の改善関連の他コースは、規定の取組を行い半年間の賃金の支払いが行われた後に支給申請が行われます。
キャリアアップ助成金における注意点
それぞれのコースにおいて、さまざまな要件がありますが、以下の点に注意しなければ不支給となるので注意しておきましょう。
- 実地調査等への協力:支給決定後に帳簿等の確認を求める場合があります。
- 提出書類の差し替えや訂正はできません
- 申請書類に疑義がある場合に該当地区労働局長が指定した期日までに書類の追加提出・補正
- 不正受給があった事業者は5年以内は助成金は受給できません
- 不正が発覚した場合には助成金を返還、なお受給日の翌日から返還終了までの期間の延滞金および返還額の20%が違約金として課せられます。
- 審査に時間がかかる場合があります
- 支給決定後5年間保存している必要があります。
- 2つのコースの要件を満たしていたとしても1つしか支給されないことがあります
といった注意事項がございますので注意してください。特に不正受給に関しての罰則は厳しく、延滞料金や違約金だけでなく、申請代理人にもその返還の連帯責務が科せられます。
キャリアアップ助成金の支給に必要な計画とは?
申請に重要なキャリアアップ計画を作成するにあたり重要になってきるのが、「有期契約者等のキャリアアップに関するガイドライン」に沿って計画を作成する必要があります。
キャリアアップ計画を作成するにあたって重要な点として
- 3年以上5年以内の計画期間の設定
- キャリアアップ管理者の設置
- 計画対象者、目標、期間、目標達成のための取組
- すべての労働者の代表者の意見
以上の4つがあります。
キャリアアップ計画書の作成例として、6つの項目は作成しておきましょう。
- 1.計画期間
- 2.計画期間中に講じる措置の項目(申請する対象コース)
- 3.対象者(申請コースごとに記載)
- 4.目標(申請コースごとに記載)
- 5.目標を達成するための具体的な取組(申請コースごとに記載)
- 6.計画全体の流れ・フロー(申請コースごとに記載)
以上がキャリアアップ助成金の大まかな計画の制作方法になります。
今回は厚労省の「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」について紹介します。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、雇用保険の適用を受ける事業所において有期契約社員やパート、派遣社員など非正規雇用の労働者を正規雇用に転換する場合に交付される厚労省の助成金制度で、中小事業主が従業員一人を正社員化する場合には最大72万円(派遣先での正社員化の場合は最大108万円)が支給されます。
また、今年2月からは新型コロナの影響で離職した求職者の紹介予定派遣に対し、助成上限の拡充が行われています。
事業の拡大などで正社員の登用に取り組む場合には是非制度をご活用ください
まとめ
今回は厚労省の雇用関係助成金「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」について紹介しました。
キャリアアップ助成金「正社員化コース」とは、有期契約労働者や短時間労働者、派遣労働者などの正社員ではない労働者の労働意欲や能力を向上させ、優秀な人材確保を目的とした厚生労働省の助成金です。
アフターコロナの経営回復に向けて、雇用維持や人材確保などの必要性も高まっていく事が予想されていますので、そのような時に活用できる助成金の1つがキャリアアップ助成金「正社員化コース」といえるでしょう。
キャリアアップ助成金の計画書が新しくなりました。令和4年12月バージョンです。